夜のミッキーマウス
夜のミッキーマウスは
昼間より難解だ
むしろおずおずとトーストをかじり
地下の水路を散策する
けれどいつの日か
彼もこの世の見せる
陽気なほほえみから逃れて
真実の鼠に戻るだろう
それが苦しいことか
喜ばしい事か
知るすべはない
彼はしぶしぶ出発する
理想のエダムチーズの幻影に惑わされ
四丁目から南大通へ
子孫をふりまきながら歩いて行き
ついには不死のイメージを獲得する
その原型はすでに
古今東西の猫の網膜に
3Dで圧縮記憶されていたのだが
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谷川俊太郎の詩です。
『夜のミッキーマウス』というタイトルを見た途端に恋しました。
ミッキーだって。。鼠なんだよ。
人間のリアルな感情、寂しさとか切なさが、ファンタジーや夢の世界の中に描かれていて、より感情が浮き立つ気がします。
ミッキーだってただの鼠に戻りたい時だってあるよ。
非現実と現実が入り乱れる表現が、好きです。
だからミュージカル映画も大好き。
トイストーリーも好き。
写真は、数年前にかりそめ女でAmiちゃんが『夜のミッキーマウス』を題材に踊ってくれたシーン。
この詩を題材に踊って欲しいとお願いしたら、そこから膨らませて、「楽屋のミッキー」のソロを作ってくれました。
みんなに夢を与える為に鏡に向かって一生懸命練習しているけどふと、何も考えずに自由に踊ってみるミッキーがたまらなく愛おしかった。
直接言葉で伝えるよりも、心に素直に入ってくる表現の仕方がある。
それがダンスを含め、アートの面白くて素敵な所だなと思います。