隣の芝生は青い?
2年前、インドネシアのBandungという街で、地元のダンサー達に出演してもらい、映像作品を作るという企画があり、その演出と振付に呼んで頂き、2週間滞在しました。
Bandungはインドネシアの首都ジャカルタから、3時間程電車で行く田舎町。
中でも私が泊まった所は、道もコンクリートで舗装されていない土の道路。近所の小学生達はみんな外の道路も裸足で遊んでいました。
まぁ、わりとわりと田舎町でした。
ホテルには洗濯機・キッチンはもちろん冷蔵庫もなく、
「石かな。。。」と思うような固いベッド、床はどうやら近くに巣があるらしく、いろんな所でアリさんが行進をしていました。
ホテルからスタジオまでは、大通りを横断しなければいけないのですが、これが大変!
信号はあってないようなもので、横断歩道が青だろうが赤だろうが、車はひっきりなしにギュンギュン通ります。
スタジオの人に渡り方を聞くと、「怖がらず、車を手で制して、とにかく歩き続ける。」とのこと。。。
怖がって立ち止まったが最後、ギャンギャン車が通って行きます。
こんな環境なので、毎日スタジオに行くまでが、まぁ大変。
朝起きたら、まずアリさんを一掃。
シャワーを浴びながら、足踏みで洗濯物を洗い、ハンガーはないので部屋のありとあらゆる角を見つけて干します。
大通りを渡るという朝のビッグイベントは恐怖との戦いです。
Mr.マリックのようですよ笑
ハンドパワーがあるかのごとく手のひらをさっと出し、大海原を割ったモーゼのように大通りを渡ります。(内心ドキドキですが、ここは車に負けない態度を示す為にポーカーフェイスです。)
スタジオについてからも、すべて英語でのやり取り。
ダンサーへの振付は踊りですからほぼ問題ありませんが、撮影スタッフとの打ち合わせはすべて英語。単語の組み合わせでしか伝えられない私にとっては、撮影のアングルやタイミングなど細かいニュアンスを伝えるのがとても難しく、1日に日本でできる仕事の分量の1/3位の事しかできません。
上手くいかない事だらけで毎日ヘトヘトです。
でもね。。。
なのですが。。。
不思議と全くイライラしないのです。
日本で生活していると、上手くいかない事があると、小さな事でもイライラしてしまいます。
でもインドネシアにいた2週間は、上手くいかない事だらけなのに、全然イライラしない。上手くいかな過ぎるから、逆に上手くいった時が、もの凄く嬉しい。
初めて大通りを渡れた時の、心が小躍りするあの高揚感は、今でも覚えているし、きっとこの先もずっと忘れないと思います。
40歳過ぎて、通りを渡れた事に、こんなに喜ぶとはね。。。
日本は本当に便利で、効率よく仕事ができる。
朝起きて、ピッとボタンを押せばお風呂に入れて、ピッとボタンを押せば洋服が綺麗になる。
誰かがスッと背中を押してくれるような電動自転車に身を委ねて、10分足らずで仕事場に着く。
いろんな事が上手くいく。
だから。。。上手くいかない事があると、イライラしてしまうのです。
勝手ですね、人間って。
1日を喜んで過ごすのか、イライラして過ごすのか。
できた事が少しだったとしても、それを喜んで過ごすのか。
沢山できたのに、ちょっとしかできない事にイラっとして過ごすのか。
便利だから幸せな訳でも、不便だから不幸な訳でもない。
できない事を嘆くより、できた事を喜びたい。
手に入らない物を指をくわえて見ているより、今ある物を抱きしめたい。
隣の芝生は青いかも知れない。でもその前にまずは自分の芝生をもっとよく見てみたい。
緊急事態宣言が出ましたね。
いろんな事ができなくなりましたが、こんなに便利な日本です。
できる事は沢山ある。
普段やってる事ができなくなったなら、自分の周りを見渡してみると、できる事、楽しみ喜びは沢山あるなと思いました。
それを発見するいい時間になるよう。
一生懸命生きたいと思います。